おしりオンラインTOP痔瘻患者さんの声Vol.2 X(旧Twitter)で病気を公表―肛門周囲膿瘍をもつ患者さんの声
Vol.2X(旧Twitter)で病気を公表―
肛門周囲膿瘍をもつ患者さんの声
クローン病と公表したことで、心が軽く。
たくさんの応援メッセージを支えに復帰を目指す。
クローン病と向き合いながら、格闘家として戦い続ける征矢貴選手にお話を伺う連続インタビュー。第1回では、周囲の方々との関わり方や病気の伝え方についてお伺いしました。
1.10代の頃から
痔ろうに悩まされ、
22歳で診断。
クローン病と診断されるまでのことを教えてください。
征矢さん18歳のときに痔ろうになりました。先生から若い人の痔ろうはクローン病が隠れている可能性があるから、大腸内視鏡検査をやりましょうと言われ、やったのですが、そのときはまだクローン病と言えるほど大腸に異変が見つかりませんでした。
22歳のときに、トイレの回数が徐々に増えてきて、トイレで用を足してもお腹に残っている感じ(残便感)がありました。日に日にトイレの回数が増えてきたのでなんだかおかしいと思い、病院に行き、大腸内視鏡検査をやりました。その結果、クローン病が発覚しました。
2.X(旧Twitter)で病気を
公表。公表したこと
で、心が軽く。
クローン病であることを、周囲の方にはどのように伝えましたか?
征矢さん最初は家族に伝えました。家族には「ずっと調子がおかしい」と言っていたので、病院に行って診断がつき、家族には「病気だった」と伝えました。あとは、ジムに毎日通っていましたので、ジムの会長にも最初に病気だと言いました。皆さん、「そうなんだ、大変だけど頑張ろう」と言ってくれました。身近な人にはそういう軽い感じで伝えました。
その後、X(旧Twitter)で病気を公表しました。最初は病気を隠して、公表しないまま復帰してから言えばいいと思っていたのですが、知り合いでがんになった方がいて、その方は今、がんが治ってとても元気にしているのですが、その方に、「病気は絶対に公表したほうがいい。公表して、自分から扉を開くことで、いろいろな情報が入ってきたりするものだから。病気を公表したくないというプライドは本当に無駄なものだから、そんなプライドは一切捨てて、公表してごらん。すごく心が軽くなるから」と言われて、それがきっかけとなって、X(旧Twitter)で公表しました。そうしたら、実際に心が軽くなったのを感じました。
3.格闘技への執着心を
手放し、治療に専念。
クローン病と診断後、練習を休んで治療に専念しようと思った理由を教えてください。
征矢さんきっかけは、自分が執着しているものを一度手放してみようと思ったことです。ストレスは病気が悪化する原因でもありますし、どうしても格闘技に執着していると、完全に身体を休めることができないのです。休むのが怖くもあります。当時は、主戦場としていた団体のランキングで、10位以内に入っていましたから、そこから外れたくないという気持ちもあり、執着していたのですが、一度全部手放してみよう、格闘技への執着もやめて、ちょっと休んでみよう、そうしたら何かが変わるかもしれないという気持ちになり、休むことを決めました。
休養を経て、格闘技に復帰し、勝利を収めています。
その後、再燃もご経験されたそうですね。
征矢さん復帰戦での勝利後、2年前(2019年)の大みそかでの試合が決まっていました。それに向けてトレーニングをしていたのですが、脊柱管狭窄症になってしまって、1年ほど休むことになりました。今年(2021年)の春には復帰したいと考えていたのですが、新型コロナウイルス感染症の流行で試合ができない状況になりました。僕としては、怪我とコロナの時期が重なってラッキーかもしれないなという気持ちでいたのですが、去年(2020年)の年末に、僕自身もコロナにかかってしまって。
コロナにかかる前は、本当に調子がよかったのです。ところが、コロナウイルスへの感染が判明した次の日くらいから、また下血するようになってしまったのです。こればかりは、何か関係があるのかわからないのですが、それをきっかけにずるずると体調が悪くなって、今年の6月に入院しました。
4.まずは無理せず、
しっかり落ち込む。
すると自然に「頑張ろう」という気持ちに。
再燃での入院中も、X(旧Twitter)では前向きなメッセージを発信していらっしゃいました。どんなふうに気持ちを整えていらっしゃいますか。
征矢さんまずは、めちゃくちゃ落ち込むことじゃないかと思います。我慢して大丈夫大丈夫とやっていると、回復まで時間がかかるように思います。僕は、1人になりたくなるタイプなので、本当にもうヤバイとなったら、1人で落ち込んで、泣いて、音楽とかを聴いたりしています。そうやっていると、自然と「こんなことをしていても仕方がないから頑張ろうか」という気になれるので、まずは無理せず、しっかり落ち込むことではないでしょうか。
僕も人並みに落ち込みますが、立ち直りは人より早いのかなと思います。それでも、1人ではなかなか立ち直れないと思うこともあります。それこそ、病気を公表したことによって、再燃して入院することになったときにも、ジムの仲間や友人、ファンの方から、たくさんの応援メッセージをいただけました。そういうメッセージを見て、病気になってもう格闘技をやめるしかないのか、続けるのか、の2択で考えたときに、一度復活できたのだから、もう一度頑張ってみようというふうに、2~3日落ち込んでから、切り替えました。そこで、じゃあ今何ができるのかと考えて、病院の中でストレッチをするくらいしかできないのですが、何もやらないよりもましだと思い、ずっと病院の中でストレッチをしていました。
5.きつい練習でも、練習をできることがとても楽しく、幸せを感じる。
退院して練習を再開されています。今楽しみにしていることを教えてください。
征矢さん今は本当に練習がきついのですが、それが楽しみといえば楽しみです。以前は、「練習きついな、行きたくないな」と思うことも結構ありましたし、今もたまにはあるのですが、入院していたときのことを思い出すと、練習したくてもできない、毎日熱が上がってベッドから動けないという日々だったので、それを考えたら今、すごく幸せだなと思います。今は練習できることがすごく楽しいです。
最後に、同じ病気を持つ方やご家族の方へのメッセージをいただけますでしょうか。
征矢さん僕も家族に、クローン病になったことで、すごく心配をかけていますが、身近な人が病気になったときに、その両親や友だちが責任を感じる必要は全くありません。病気なので、食べ物などに少し気を遣ってあげたりするだけで、病気になった本人はすごくうれしいものです。本当に少し気にかけてあげるだけにして、あとはいつもどおりに接してあげればよいのではないかと思います。
同じ病気の人へは、病気の自分も大切にしてあげてほしいと伝えたいです。自分が弱いから病気になったとか、そういうふうにネガティブに考えるのではなく、ちょっと身体にストレスがかかって頑張り過ぎた自分がいるわけですから、すべて好きになってあげてほしい。自分を大切にしてあげてほしいと思います。
(2021年11月取材)